2人が本棚に入れています
本棚に追加
-クロフク- プレリュード 第一話
-クロフク-
*プレリュード*
第一話
見上げれば、今にも泣き出しそうな、曇天(どんてん)の空――。
人気(ひとけ)のない広い構内には、しんみりと湿った空気がわだかまる。
そこでひとりきり立ち尽くすのは、細い影の、少女だった。
壁一面の大きな窓辺から、薄暗く立ちこめる雲を寂しげ見上げている。
そのぽっかりとした虚無的な空間に、やがてまた別の気配が、そっと、静かに近づいた。
それは少女のすぐ背後まで、あと三歩ほどのところでぴたりと立ち止まる。
それきり、無言が続いた――。
最初のコメントを投稿しよう!