第1話 柊奈緒は振り回される

10/21
前へ
/49ページ
次へ
「あ――」 ケースもない裸の小さな消しゴムが机から落ちた。 二、三回跳ねるとコロコロと静かに転がる。 「…はぁ」 まぁそんなとこだろうと、大げさにため息をついたイミナは、俺と共に転がる消しゴムの行く先を眺めていた。 まぁ、そうだよな。ハレがする悪魔っぽいことなんて精々これくらいが限界で―― 「!!」 おい。 待て、消しゴム。 止まれ。 そこにだけは行くな。 その机の下はやめてくれ。 その机は、学園のアイドル沢渡(さわたり)さんの―― しかしそんな俺の祈りむなしく小さな消しゴムは、黒いニーソックスに包まれた細く長い足の側でピタリと止まった。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加