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身体を少し乗り出して、小さな声で沢渡さんに話しかける。
「さ、沢渡…さん?悪いんだけど、その――。…あ、足元にある消しゴムを取ってくれないかな?」
よし!大丈夫!!バッチリだ!!
名前を呼ばれてこっちを向いたときのキョトンとした顔に一瞬意識を失いかけたがなんとか耐えた!!
俺の目はザバンザバン泳いでいただろうが気にしない!!
「…ん?えーっと……、あ!これかな?」
沢渡さんは顔をこちらに向けたまま自分の足元を探ると、小さな消しゴムをその手に取った。
そう!それ!!
俺は黙って縦に頷く。
それを渡してくれれば、俺は沢渡さんに拾って貰った消しゴムとして、この先一生使うことなく大事に保管する!!
…と、緊張と興奮が入り混じって凄く気持ち悪い感じになりながら、俺は右手を伸ばしてその消しゴムが渡されるのを待った。
しかし、彼女は――
「んー…。だーめっ」
顎に人差し指を当てて何かを考えた後、笑顔でそう言ったのだ。
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