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「はぁ…」
放課後、帰宅の途中の道端でため息が出る。
それは不幸や疲れから出たものではない。
「はぁ…。沢渡さんとあんなに話しちゃったよ。消しゴム貰っちゃったよ。『えへへっ』だってよ」
オレンジ色に染まる夕焼けに、沢渡さんから貰った消しゴムをかざしてみる。
そこに彼女のあの笑顔が浮かんだ気がした。
「しかも俺の消しゴムもらっちゃうってよ!なんだそれ!可愛すぎか!!――これはもしかすると……、俺のこと好きだったり!?…なーんてな!さすがにそれは調子乗りすぎか!!奈緒くん調子乗りすぎか!!なぁ?」
そう言って後ろを振り向く。
今は誰もいないが、周囲から見れば気持ち悪い独り言だ。
だけど俺にはちゃんと話しかけている相手がいるわけで。
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