第一章・ーたのしみー

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 そうして必死になって抵抗している内に、懐からナニかががしゃんと地面へ滑り落ちる。 「ーー!」  俺も、俺を取り押さえようとしていた警官も、一瞬にして時間が止まり落ちたモノを凝視する。  それは赤く染まった、愛用の鋏であった。  これがなければ始まらない。これがなければナニも作れない。雑貨を作りたいのだ。  俺は、雑貨を作りたいのだ。雑貨を作るために、材料を調達するために外出したのだ。  だから邪魔しないでくれよ。  赤く……?  見ると、服も何もかもが不自然な程に真っ赤っか。  ……ああそうか。俺、ずっと、赤い服を着ているのだと思っていたよ。  ずっと大いなる勘違いをしていたよ。  そうだよ違うのだ。これは雑貨を作る時に付着した、材料達からの色移りなのだよ。  だから、な? 不自然なところなんかナニもない。  落とした鋏を拾って、懐へと直そうとする。  これ以上邪魔はされたくない。俺は材料達を調達しに行くのだからな。  まだまだ大量に必要なのだ。簡単に手に入らないから大変なのだ。 「君、早く署にきたまえ!」  ああ煩わしい。肩を掴むな、鬱陶しい……!
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