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そうして必死になって抵抗している内に、懐からナニかががしゃんと地面へ滑り落ちる。
「ーー!」
俺も、俺を取り押さえようとしていた警官も、一瞬にして時間が止まり落ちたモノを凝視する。
それは赤く染まった、愛用の鋏であった。
これがなければ始まらない。これがなければナニも作れない。雑貨を作りたいのだ。
俺は、雑貨を作りたいのだ。雑貨を作るために、材料を調達するために外出したのだ。
だから邪魔しないでくれよ。
赤く……?
見ると、服も何もかもが不自然な程に真っ赤っか。
……ああそうか。俺、ずっと、赤い服を着ているのだと思っていたよ。
ずっと大いなる勘違いをしていたよ。
そうだよ違うのだ。これは雑貨を作る時に付着した、材料達からの色移りなのだよ。
だから、な? 不自然なところなんかナニもない。
落とした鋏を拾って、懐へと直そうとする。
これ以上邪魔はされたくない。俺は材料達を調達しに行くのだからな。
まだまだ大量に必要なのだ。簡単に手に入らないから大変なのだ。
「君、早く署にきたまえ!」
ああ煩わしい。肩を掴むな、鬱陶しい……!
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