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本当に謎な人だなぁ……。
首を傾げてから、教室に戻った。
早く日誌を書き上げちゃって家に帰ろう。
椅子をひいて腰を下ろし、ペンを握った。
それから間もなく、誰かが教室に入ってくる気配がした。 足音が私の座る席に近付いてくる。
顔を上げると、そこには武田くんがいた。
人懐こい瞳がこちらに向いている。
「武田くん……どうしたの?」
武田くんは向かいの席に腰を下ろすと、日誌を見つめた。
「B組って日誌は一人で書くの? もう一人は?」
「え? ええと……本当は二人で書くんだけど……用事があるからって帰っちゃって……」
「けっこうコレ、面倒だよね。 大変じゃない?」
「うん……でも私、断れない性格で」
「俺も手伝うよ」
武田くんは私のペンケースからペンをもう一つ取り出すと、日誌をくるっと自分側に向けた。
「い、いいよ! 悪いし……」
「手伝わないと俺が怒られるからさ」
「……え?」
キョトンとする私を前に、日誌にペンを走らせていく。
スラスラ書く様子を見ながら、またおかしな違和感を覚えた。
「日直の名前、柏木さんの名前も書いちゃうね。 柏木八重子、っと」
そう言って、最後の欄に私のフルネームを書いた。
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