ラブレター

戸惑う武田くんに見せながら、私は自分の名前を日誌の空欄に書いた。

『 柏木 八恵子』

武田くんは、わからないというように首を傾げた。

「私の名前の真ん中、〝 重 〟じゃなくて〝 恵 〟なの。 いつもみんなに間違われるから慣れてるんだけど、貰ったラブレターはちゃんと本当の名前を書いてくれていたから、嬉しく思っていたの」

「……！」

「武田くんが日誌に書いた文字は、ラブレターとはやっぱり違うよね……。 これって、どういうこと？」

武田くんは困ったという目をぐちゃぐちゃになった前髪の間から覗かせた。

その顔が誰かに似ている気がしたと同時に、ラブレターの文字と同じ文字をついさっき見たことに気付いた。

廊下に散らばった数学のノート。

「……ガリ勉くん……？ そうだ、あの男子の名前も、武田くん……！」

目の前の武田くんが、観念したようにため息をついた。