37人が本棚に入れています
本棚に追加
「柏木さん、来てくれたんだ!」
すぐそこに、武田くんがいた。
背が高く、よく通る声。
人懐こい感じの笑顔が眩しい。
クラスが違うからこんなに近くで見たのは初めてだったけれど、女の子たちが騒ぐ理由がわかった気がした。
「あのさ。 手紙……見てくれた?」
こくりと頷くと、武田くんはホッとした表情になった。
と同時に、まるで謝罪するように視線を落として頭を掻いた。
「その、実はあの手紙さ……」
言いずらそうな様子にハッとした。
やっぱり。
こんな完璧な人が私を好きなんて、そんなわけないよね。
「あ、大丈夫だよ。 わかってるから」
武田くんの言葉を遮って、私は自分の予想が当たったと内心がっかりした。
「罰ゲームか何かでしょ? いいよ、なんとなくそんな気がしてたから」
「え?」
「私、武田くんほどの人に告白されるような女の子じゃないのは自分でもわかってるし。 うん、ホントに。 もう忘れるから、武田くんも気にしないで」
「や、ええと……」
「じゃあね」
まだ何か言いたそうな武田くんを残して、私はその場を去った。
最初のコメントを投稿しよう!