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思えば、今日は朝から調子が悪かった。
軽い頭痛に生理痛。
マラソンなんて見学にしておけば良かった。
なんとか最後まで走り切ったものの、フラフラと貧血のような状態になって体育の時間を終えた。
「おう、柏木! 悪いけどコレ、教室まで運んでおいてくれないか?」
そんなときに限って、先生から次の授業で使うたくさんの教材を手渡された。
「あ、は、はい……」
「いつも悪いな。 柏木は素直で本当に助かるよ」
素直っていうか。
単に、断れないだけなのに。
自分の性格が恨めしいなぁ……。
重い教材を持ちながら、階段をどうにか昇って行く。
ズキン、と痛みが走った。
無理してマラソンに参加したせいか、頭痛が酷くなっている。
あぁもう嫌だ、これを運び終わったら保健室にでも行こう……。
「……あ」
階段の途中ですれ違った生徒が、小さな声を発した。
見上げると、下駄箱でぶつかったガリ勉男子。
眼鏡の奥の目を見開いて私が手に持った教材を見ていた。
「……? あの……?」
「重……」
「え?」
「……!!」
その瞬間、ガリ勉男子は背中を見せて一目散に階段を駆け下りて行った。
「な、なに!?」
なんだかよくわからないけれど、意味不明に避けられた気がする。
謎だ……。
でも、頭とお腹が痛すぎて、それ以上考える気にもならない。
まぁいいや、と一歩を進めた。
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