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「あれっ絵の具、黄色が無くなっちゃった」
「あ、ほんとだね」
グループの子が言った。
確かに、毎年毎年紅葉を描かされているのだから、黄色は無くなりやすいのだ。
「これ使っていーよ!」
「ありがと」
一人の子が絵の具を取り出して、そのまま箱ごと手渡した。
時計を見ると、すでにお昼の時間だった。
集中力の切れていた私は筆を置く。
絵は午後に頑張って仕上げることにした。
ーー
昼御飯の後はメインイベントも終わったとダレる生徒が続出した。
私は順調に描き進めていたけれど、日がポカポカと当たりだしたのをきっかけにしてこの場には眠りの気配が漂っている。
私のグループ内でも文句が出始めた。
「もう絵とかいいってー」
「食後にこの陽気で寝るなとかほんと拷問じゃない?」
「春もそう思うよね?」
同意を求める声に、私は描き続けながらも、うん、と短く返事する。
絵の具の混合が上手くできて、出したい色が出せたなと私が考えていると、一人が名案でも思い付いたように手を打った。
「そうだ。笹原の絵と交換しちゃえば良くない? 絵だけは上手いから、アイツ」
その言葉に手が止まる。
「あーダメダメ。だって、アイツ絵の具持ってないし」
私は、顔を上げた。
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