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「さっき貸してあげた絵の具、笹原のだもん」
「何? もしかして隠したの?! うけるー」
そう言って笑う彼女達は、さっきまで眠そうだったのが嘘のように生き生きしていた。
バッ!!
「わっ、ビックリしたっ」
「どうした?」
「春ー?!」
急に立ち上がった私に驚いて皆が声をあげたけれど、それを全部無視して私は走り出した。
いない。
いない……。
朝から顔を見ていないけど、秋ちゃんはここに来ている筈だ。
ほとんどの生徒が街を見下ろせる開けた場所にいるけれど、秋ちゃんの姿は無い。
秋ちゃんは、今日の写生会を凄く楽しみにしていたんだ。
どこにいる?
今、どんな気持ちでいる?
どうして私は、皆に間違ってるって一言言えなかったんだろう。
勇気が無かったから?
一人になるのが怖かったから?
ほんとに自分が大嫌いだ。
「秋ちゃん!」
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