秋色メーデー

8/9
前へ
/9ページ
次へ
何分そこに居ただろうか。 「春、春ー!」 「いたー」 ザクザクと葉っぱを踏む音と一緒に三人が追いかけてきた。 「もう集合掛かってるよー」 「春?」 返事をしない私を一人が覗きこむ。 「何それ?」 「もしかして、笹原のじゃない?」 私の手からヒョイ、とスケッチブックが取り上げられた。 「怖っ! 絵の具無いからって執念深すぎでしょー」 「執念ってゆーか、怨念?」 「無駄に上手いっていう(笑)」 キャハハと笑う彼女達から、私は無言でスケッチブックを取り返す。 「きゃっ」 勢い余って一人が尻餅をついたけれど、かまうものか。 「ちょっと!」 私は手早くシートとお弁当を纏めると三人に背を向けた。 「一体、何な訳?」 「待ちなよ、春!」 普段は従順な私の、いつもと違う様子に驚きながらも、三人は私の態度を許さなかった。 私だって、許さない。 自分の事だって、許せない。 ピーーーっと担任の制止の笛が鳴り響くまで、私達四人は掴み合い、押し合いへし合いを繰り返した。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加