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何分そこに居ただろうか。
「春、春ー!」
「いたー」
ザクザクと葉っぱを踏む音と一緒に三人が追いかけてきた。
「もう集合掛かってるよー」
「春?」
返事をしない私を一人が覗きこむ。
「何それ?」
「もしかして、笹原のじゃない?」
私の手からヒョイ、とスケッチブックが取り上げられた。
「怖っ! 絵の具無いからって執念深すぎでしょー」
「執念ってゆーか、怨念?」
「無駄に上手いっていう(笑)」
キャハハと笑う彼女達から、私は無言でスケッチブックを取り返す。
「きゃっ」
勢い余って一人が尻餅をついたけれど、かまうものか。
「ちょっと!」
私は手早くシートとお弁当を纏めると三人に背を向けた。
「一体、何な訳?」
「待ちなよ、春!」
普段は従順な私の、いつもと違う様子に驚きながらも、三人は私の態度を許さなかった。
私だって、許さない。
自分の事だって、許せない。
ピーーーっと担任の制止の笛が鳴り響くまで、私達四人は掴み合い、押し合いへし合いを繰り返した。
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