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意味がわからず振り向こうとすると、それより先にチュッと音と共に右頬に感じる柔らかい感触。
「笑われるかと思って黙ってたんだけど…俺も持ってんだよね。あの時のアンケート用紙。」
「…ウソ?!」
「ホント。」
何だか可笑しくなって笑みが零れてしまった。
こういう感覚が彼と私は似ていて、そのことに胸が温かくなる。
「捨てられなかったんだ…初めて唯に近付けた記念のものだったから。」
抱き締めてくる腕に力が籠り、彼が私の首元に顔を埋めてくる。
きっといろんな想いを隠そうとしてるんだろう。
胸の前に組まれている彼の腕に手を添えて、彼の温もりに幸せを感じる。
「私たちの宝物だね。」
「うん。捨てられなかったことにも意味があったのかもな。」
そうかもしれない…。
私たちはあの始まりからココに至るまで、何かに導かれていたのかもしれない…。
様々な困難を乗り越え、やっと辿り着いた幸福の時。
耐えてきてよかった。
バカなこともたくさんして何人もの人を傷付けてしまって、後悔の念で自分を痛め付けようとしたこともあったけれど。
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