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あんなに辛く苦しかった日々の痛みが彼の愛に溶かされ、嘘のように私の胸から消えかかっている。
「遼…。」
名前を呼ぶだけで心が身体が温かくなる。
彼と一緒にいるだけで自分のことも大事にしようと思えるし、こんな自分を好きになれることが不思議だ。
「唯……愛してる。」
耳元で甘く囁く彼の声に脳と心が震えた。
顔だけを少し彼に向けて私も溢れる想いを声に出して伝える。
「私も……愛してる…遼。」
至近距離で微笑んでくれる顔が傾きながら近付き、彼の唇が私のそれを塞ぐ。
“愛してる”なんて言葉じゃ伝えきれない。
複雑に絡まりあった彼と私の赤い糸は、二度と解かれることなく知らぬ間に切れて永遠に繋がらないと思っていた。
でも切れることもなくスルスルとほどけていって、今、きれいな一本の糸となって私たちを繋いでくれている。
互いの左手薬指に耀くリングが私たちの想いの温度を上げる。
長い長い時間をかけて結ばれた私たちの愛は、もう消えることはない。
形を変え色を変えても熱は消えることなく互いに与え続けていくだろう。
あなたに出会えて本当の愛を知った私は、世界中の誰よりも幸せな女。
だから私もあなたを死ぬまで愛し続けるからね。
遠くから葵の声が聞こえてくるまで、私たちは唇の温度で愛を伝え合っていた…。
完
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