プロローグ

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「あ、なんだ、ここにいたんだ?何してんの?」 入り口に背中を向けて座っていた私の耳に彼の声が届き、ピクリと身体が跳ねて意識が現実に戻ってきた。 どれくらいの時間、こうしていたんだろ… 頭の中にはまだ過去の残像がぼんやり流れている。 誤魔化すように苦笑いを浮かべながら振り返り彼を見上げた。 「あは。うん。片付けてたんだけどねぇ…」 近寄って来た彼は私の手元を覗き込み、状況を把握すると笑いを噛み殺すような表情を見せたが、私の頭にポンと手を置いてわざと大袈裟に溜め息を溢す。 「はぁ…お前さ、いつんなっても終わんないぞ?何引っ張り出して想い出に浸ってんだよ?ん?…なにそれ…」 何を見ていたのか気になったらしく屈み込んでジッと見ている。 見つかってしまった…。 彼はどう思うだろう。 こんな年になってもまだ過去を引き摺っていたのかと呆れるだろうか。 それとも、どこかでずっと想いを捨てきれずにいたのかと笑うだろうか。 私に取っては特別だったのだ。 あの時は気付かなかったけど、大切で大事で無くしたくない想いだったんだ。 どこか無意識に忘れちゃいけないものだって思ってたんだよね。 だからいつになっても鮮明に思い出せてたんだよね… 何年経っても色褪せないあの時間を…
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