第1章

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予期せぬ状況に驚いて相手を見上げて固まる私。 顔を赤くして視線をさ迷わせる彼。 「あのぉ…先輩?書いてくれますよね?」 「あ、うん…」 受け取った封筒を見つめ、ちょっと戸惑う。 「よかったー!じゃあお願いします!」 そう言って勢いよく頭を下げた彼が顔をあげて私の視線と交わった時、恥ずかしそうにニコッっと笑った。 その顔が印象的だった。 彼のことを一度も意識したことなどなかった。 もちろん挨拶程度はしたことはあるが、中学生で三年が一年をそういう対象に見るなんてあり得ないと思っていたから考えてもみなかった。 でも憧れている先輩のことを知りたいからって書いてもらうこともあるもんね。 だから軽く考えていた。 アンケート用紙に記入するのは初めてじゃない。 何度かもらった経験はあるし、いつものように記入して戻せばいい。 それだけのこと! そう思って私は家に帰ってすぐに記入し、いつ会っても渡せるようにと鞄に入れた。 この時点ではそれで終わると思っていた。
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