体育祭は大っ嫌い

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「まあ別に? 噂になるついでに……付き合ってもいいし?」 「は?」 ……はい?なんですか? なにを突然、 はにかみながら云ってるんですか、この人は。 第一、初対面ですよ? 「……俺はおまえのこと、知ってたよ。 一年四組、西沢己奈」 急に周囲の音が消えて静かになった。 私をじっと見つめる、先輩の真剣な目。 「なんで……」 「ごめんねー、待たせちゃって。 足、大丈夫かしら?」 ……知ってるんですか?聞こうとした言葉は 先生に遮られた。 さっきの静けさが嘘のように、音が戻ってる。 「どうかした?」 先生が不思議そうに首を傾げる。 私のあたまを軽くぽんぽんすると 先輩はそのままいなくなった。 ……早い心臓の鼓動。 熱い頬。 熱をもってどくどくと痛む右足首。 大っ嫌いな体育祭だけど。 今年は――。 【終】
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