15/16
前へ
/80ページ
次へ
「まだまだ修行が足りないようですがね」 清さんが少し面白そうにあずきを見やって言うので、あずきは、 「は?」 と聞き返した。 清さんはおかしそうに笑いながら、 「お嬢さんのことですよ。夏樹があんなに我を忘れるところなんて久しぶりに見た。よっぽどお嬢さんのことが好きらしい」 「へ?」 やっぱり聞き返してしまう。 「でも――」 声を荒げたのは、隣に座っていた栗下だ。 「あの人と山下は、そんな深い付き合いじゃないですよ」 栗下の横顔を見ると、頬が紅潮している。 「会ってる時間だって、ほんの少しだ」 怒っているのか、それとも照れているのか。 清さんだけが余裕の表情で栗下の言葉を受け止めて、 「そうですね」 と微笑む。 栗下は何を思って、清さんに言い返してくれたのだろう。 そしてあずきは?
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加