150人が本棚に入れています
本棚に追加
「まだまだ修行が足りないようですがね」
清さんが少し面白そうにあずきを見やって言うので、あずきは、
「は?」
と聞き返した。
清さんはおかしそうに笑いながら、
「お嬢さんのことですよ。夏樹があんなに我を忘れるところなんて久しぶりに見た。よっぽどお嬢さんのことが好きらしい」
「へ?」
やっぱり聞き返してしまう。
「でも――」
声を荒げたのは、隣に座っていた栗下だ。
「あの人と山下は、そんな深い付き合いじゃないですよ」
栗下の横顔を見ると、頬が紅潮している。
「会ってる時間だって、ほんの少しだ」
怒っているのか、それとも照れているのか。
清さんだけが余裕の表情で栗下の言葉を受け止めて、
「そうですね」
と微笑む。
栗下は何を思って、清さんに言い返してくれたのだろう。
そしてあずきは?
最初のコメントを投稿しよう!