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「せっかく情熱的に誘ってくれたのに、けっこうビジネスライクなんだね、あずきちゃん」
大きな車を楽々と操りながら、夏樹は街中を自由に走らせていく。
『確かにこれだけ格好よかったら、モテるのも不思議じゃないわね』
あずきは夏樹のハンドルさばきをぼんやり眺めながら、そんなことを思う。
すると、
「でも今日は同伴するつもりはないよ。あの店は今夜はお休み」
意外なことを言った。
「へっ?」
びっくりするあずきに、
「今夜はデートだろ。あずきちゃんから誘ってくれた」
逆に問われて、
「そ、それはそうだけど……」
しどろもどろになるあずきに、夏樹はただ、
『ニコリ』
意味ありげに微笑む。
でも行き先がホストクラブでないのなら、この車は今、どこに向かっているのだろう。
夏樹はあずきに目的地を告げることなく、車を走らせている。
だんだん街の灯りが少なくなっているように思うのは、気のせいか?
「……」
夏樹はこれを『デート』と呼んだ。
しかし、デートとなれば、向かう先なんて、あずきの頭をよぎるのはソレしかなくて……
「あの、……夏樹?」
あずきの声が震える。
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