2/7
147人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「せっかく情熱的に誘ってくれたのに、けっこうビジネスライクなんだね、あずきちゃん」 大きな車を楽々と操りながら、夏樹は街中を自由に走らせていく。 『確かにこれだけ格好よかったら、モテるのも不思議じゃないわね』 あずきは夏樹のハンドルさばきをぼんやり眺めながら、そんなことを思う。 すると、 「でも今日は同伴するつもりはないよ。あの店は今夜はお休み」 意外なことを言った。 「へっ?」 びっくりするあずきに、 「今夜はデートだろ。あずきちゃんから誘ってくれた」 逆に問われて、 「そ、それはそうだけど……」 しどろもどろになるあずきに、夏樹はただ、 『ニコリ』 意味ありげに微笑む。 でも行き先がホストクラブでないのなら、この車は今、どこに向かっているのだろう。 夏樹はあずきに目的地を告げることなく、車を走らせている。 だんだん街の灯りが少なくなっているように思うのは、気のせいか? 「……」 夏樹はこれを『デート』と呼んだ。 しかし、デートとなれば、向かう先なんて、あずきの頭をよぎるのはソレしかなくて…… 「あの、……夏樹?」 あずきの声が震える。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!