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「彼女ラッキーだよ。今夜は『幸運の神』が来店中だ。寄ってって損はないよ」
その奇妙な呼び込みに、あずきはつい足を止めた。
「幸運の神?」
思わず聞き返したあずきに、呼び込みの若いホストはよくぞ聞いてくれましたと、
「そうそう『幸運の神』。出会った女性は間違いなく幸せになれる伝説のホスト。あのナツキさんが今夜は来てるんだよ。ま、そう呼んでるのは、俺たちだけだけどねー」
ニコーっと笑う若いホストの顔に悪意は見えない。
でも仲間のホストたちに『幸運の神』扱いされる伝説のホストって……、
少しだけ興味がわいた。
案内されるままに店に入れば、店内はキラキラと輝いて、天井からは豪華なシャンデリアがぶら下がっている。
そして店構えに負けない、スタイルの良い男たちがずらーっと。
でもそんな中で、どんなキラキラよりも目を惹くのは、赤い髪にダークスーツを着たひとりの男。
まるで吸い寄せられるように、自然にそちらを見てしまう。
きっとあれが、『幸運の神』と呼ばれるホスト。
「ナツキ」
あずきの足は思わずふらふらと前に出る。
別の席に案内しようとするホストの手を振り切って、
「お願いあなた。私を助けてっ!」
夏樹の腰にしがみついていた。
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