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「夢ちゃん」
「……なあに」
止まらなかった笑いのせいで頬を膨らませた夢ちゃんも可愛い。
泣き顔も、ふくれっ面も、真面目できりりとした表情も。全部全部可愛い。
だけど。
一番好きな表情を、まだ見ていない。
「僕は、君のだよ。夢ちゃん。ずっとずっと昔から――出会ったその日から」
「叶太、くん?」
躊躇いと戸惑いで空をさまよっていた夢ちゃんの手を取り、ぎゅっと握る。
「今更、他の人のものになる気なんか、さらさらないよ?」
夢ちゃんが、好きだ。誰よりも。
顔を近づけて、笑顔と一緒に伝えた。僕の、精一杯の気持ちを。
はく、と呼吸を忘れていたのか夢ちゃんは数回の深呼吸を繰り返して――顔を真っ赤に染め上げた。
あわあわと逃げたがる身体を黒板と僕の身体で押さえ込んで、顔を覗きこんだ。
「返事は?」と続けて。
顔を真っ赤にした夢ちゃんが、僕が一番欲しい言葉をくれたのかは、僕だけの秘密。
夢ちゃんは、泣き顔もふくれっ面も真面目な表情も可愛いけれど、笑顔が一番可愛い。
照れくさそうに見せてくれたその笑顔がたまらなくて、心から幸せな気持ちになった。
気が強くて、だけどちょっと抜けてて、笑顔の可愛い僕のおひめさま。
Fin.
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