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夢ちゃんの言葉を遮って放った声は、自分で思っている以上にきっぱりと否定していて、自分自身でも少し驚いた。
小さな夢ちゃんと目線が合うように膝を曲げて、顔を覆ったままの腕を取る。
冷たくて震えていて、いつも前だけを見据えて誰からも頼られ堂々としている生徒会長の夢ちゃんとは、別人のようだった。
「……ほんと?」
「本当だよ! 僕が夢ちゃんに嘘吐いたこと、ある?」
「……ない」
「でしょう?」
微笑みかけると夢ちゃんは恥ずかしそうに腕を外し、顔を露わにしてくれた。涙に濡れた丸っこい瞳が、すごく可愛い。
「じゃ、じゃあ、付き合うって言ったのは?」
「ん?」
「北村先輩に言ったんでしょう? 付き合うって……」
北村。
待って。夢ちゃんの言ってる北村と僕の頭の中に浮かぶ北村がたぶん一致してない。
一致していたとしても、夢ちゃんはとんだ勘違いをしてる。
ぐいん、と思い切り首を傾げて唸ると、視線を合わせるように夢ちゃんも顔を傾けてきた。か、可愛い……。
「夢ちゃん、北村先輩って……純先輩のこと、とか言わないよね?」
「え、そうだけど?」
え、そうだけど。
え、そうだけど!?
全身の力が抜けてへなへなと教壇に突っ伏した僕の背中を、夢ちゃんはさすりながら何度も呼びかけてはくれるけど。
こんな勘違いがあるだろうか。
……純先輩は、男だ。
それも、女の子が大好きでぱっぱらぱーでいい加減な。
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