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「仕方ない、凡庸の貴様にも分かりやすく説明してやる」
「あ、ああ頼むぜ」
精一杯強がった口調で渡部は上原と向かい合った。
「まず、俺とお前がこうして向き合っている事についてだ。わかっているように、俺は小説の世界、貴様は現実世界の人間だ」
「ああ」
「単刀直入に言う。俺は現実世界へ行きたい。そう考えて現実世界の話を読んでいた」
「現実世界の話を読む?」
渡部は意味がわからないと言う顔だった。
「俺の世界で言う小説の中身は貴様らの世界の話だからな。こういう風に」
そう上原が言うと、壁に先程まで渡部がいた教室が写し出された。
「どうなってんだ?これ?」
「俺はこうして貴様のストーリーを読んでいた。いや、見ていたというほうが分かりやすいかもな」
「あ、あぁ」
最早圧倒されていた。
「そこで偶々貴様を見つけたのだ。俺になりたいと願う貴様をな。そして、俺と貴様両方が真に入れ替わりたいと願ったが故にこの奇跡は成ったというわけだ」
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