16人が本棚に入れています
本棚に追加
/216ページ
家の前に到着する。
吸い込む時も、吐き出す時も、何の音もしない深呼吸をする。
相変わらず、暗いままの自分の家は、帰ってきた時の安心感を一時も与えては来れなそうだった。
「ただいま」
僕は小さな声で誰も居るはずのない家で、つぶやいた。
父も母も妹も......
誰もいないリビングはとにかく寂しかった。
けれど、こんな事態になるなんて脳みそが理解できていないのか、涙が出る程に寂しいわけではなかった。
あり得なさすぎて、信じられなさすぎて、家族はまだどこかにいるんだと思えずにはいられなかった。
リビングの電気を付けないまま、僕はソファに横になった。
天井を見上げて、しばらく考えこむ。
最初のコメントを投稿しよう!