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翻訳結果に表示された単語には、何の心当たりもなかった。
しかし、文字を見る限り、ここが教会であることは分かった。
「教会......?」
涼果は画面に映るその男を見ながら、言った。
画面越しの男は、教会と思わしき場所の石畳の上を行ったり来たり歩いていた。
この男も、取り残された人間のひとりなのだろうか?
この男は、僕たちにとって味方なのか敵なのか?
それを知る術はどこにもなかった。
すると、今まで歩き続けていた男が、その足を止めた。
男はゆっくりと、頭を上げると今僕たちが見ているカメラを見上げた。
そして、音までは聞こえないが、口を動かしているのがわかる。
何かこの男は僕たちに伝えようとしている。
何かを知っている。
何の根拠もないが、そう感じた。
男が見つめたまま、そのモスクワの教会にあるカメラだけがすーっと真っ黒くなった。
「くそ! カメラが切れた!」
桔平は、キーボードを叩き続けるが、次々と世界中のカメラが連鎖的に黒くなっていった。
数百数千のカメラはすべて映らなくなると、桔平のノートパソコンの電源も落ちてしまった。
「電池切れだ」
桔平はノートパソコンを閉じると、リュックサックの中にしまった。
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