六人と一匹

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「でもさ、船なんて持ってないよな?」 和哉にしては珍しく、まともな回答で返してきた。 「もう、人がいないから、人のものとかそういうの関係ないんじゃないかな?」 僕は、暴力的な発言なのかなと思いつつも、和哉の疑問に答えた。 「そうだな、春花の言うとおり。残念ながら、もうこの世界には俺たちだけしかいないみたいだし、船は拝借するのはありだな」 目を閉じたままの桔平が同意してくれて、安心した。 これからどうするべきなのか。 自分の身に何が起こっているのか理解もできないと、急に肉親や家族がいなくなっても、涙も出ない。とにかく、状況を良くするために、次の手を考えてしまう。 これからどうするべきなのか と。 人間という生き物は実に良く出来た生き物だ。 この感覚はおそらく、こうなった人間にしかわからないのであろう。
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