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「あれ、俺のせいだったんだよな。
俺のせいで変に勘ぐられて。
あの時だって、やつらを怒鳴り散らしながら、同じ様にハルの体を思い通りにしたいと思っていたんだ。
さあ、俺の告白はおしまい。
ハルの憧れのテツはどこにもいないんだ。
サッカー選手でもない。
病気の親父を抱えた、冴えない屋台のラーメン屋だ。
その上、純粋に憧れて来るハルに欲情してた変態だって分かったんだ。
幻滅しただろ。
もう会うことも無いと思うし、キスは最後の餞別にもらっておいた。
ラーメンは奢るから、食べたら早く帰れ」
すっと立ち上がって屋台の裏に回り、片付けを始めた先輩の姿を目で追う。
屋台の提灯がその背中に影を落としている。
あの時
僕は、何度夢に見ただろう。
『奉仕しろよ』と言ったあいつの顔がテツ先輩になって、歓喜に震えテツ先輩を咥える自分を。
果ては何度となくそれを夢想し、自ら快感に打ち震え、自己嫌悪に陥りながらも止めることができなかった。
その罪悪感から先輩から遠ざかって行ったのだ。
それが……
嘘だろ?
テツ先輩が僕を―
帰れ?
それなら何故告白した?
餞別のキス?
……僕に欲情した?
ゾクゾクと体の奥から震えが起こる。
初めて見るテツ先輩の陰に、落胆するどころか惹きこまれていく。
憧れの人が自分のところまで降りて来た。
もう手の届かない人じゃない。
僕は先輩の役に立つ?
単なる欲望でも
たとえ遊びでも
その対象になれるなら構わない。
テツ先輩の手に触れて欲しかった。
ずっと。
汚れていたのは自分。
先輩を想って、欲望を吐き出していたのは僕だ。
もうずっと、女の子に何も感じない自分を、何かと理由をつけて胡麻化してきたけど……
先輩が男の僕でもいいのなら、体だけでも繋がれるなら……
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