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「テツ先輩……本当にいいんですか?
僕が高校の時みたいにまとわりついても
……今、彼女とかいないんですか?」
カーテン越しに、薄らと明るくなって来たのが分かった。
少しウトウトしていたようだ。
キンと冷えた空気に晒された、先輩のむき出しの肩に頭を預け、布団の中でお互いの肌の感触と、体温の心地よさに浸っていた。
先輩は横になったままスマホの画面を見て、僕の頭を抱えた手でモゾモゾと髪を弄んでいる。
先輩の指や唇や体の感触が蘇って羞恥に襲われたが、どうしても気になっていた事を聞いてみることにした。
この期に及んで、だが。
「ん?
ああ、起きてたのか……
今更何を言ってんだよ。
随分前からいないし、いた時だって、しっくりしなかったし……
今度
もうちょっと広いところに引っ越そうと思ってて
もしハルが良ければ一緒に……
あっ!
ちょ、ちょっと待て!
うっ…」
憧れの先輩と想いが通じ合ったこの日の朝、僕は世界中で一番幸せだと感じた。
だが、この話にはもうちょっと続きがある。
「え?先輩!
ブルーメガネンジャーだったんですか?」
「なんだ、あの時台本読んでたから知ってると思った」
「いや、屋台ラーメンのところのセリフの衝撃で、その後の部分はろくに……」
「レッドメガネンジャーに励まされて、父親に『美味い』と言われるラーメンを作れるようになったラーメン屋はさ、誘われてメガネンジャーになるんだよ」
テレビ番組のガイド雑誌を見ていたら「メガネンジャー特集」と題された見開き写真特集プラス5人のレンジャー達へのインタビューが載っていた。
それぞれ異なる能力を持った眼鏡を掛けることで、超人的な特殊能力を発揮するレンジャー達の人気はうなぎ上り……らしい……。
ちびっこのみならず、その母親とか姉とか……特にイケメンのブルーメガネンジャー荒川徹太の人気が凄いとか……
知らなかった。
道理でこんなマンションに引っ越しできるはずだ。
僕自身は、派手に引っ越しとかせずに、少しづつ移る予定で合鍵をもらってある。
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