屋台のラーメンは好きですか?

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先輩が選手として致命的な怪我をしたと人伝に聞いたのはもう一年以上も前だ。 それ以前も、自分から連絡を取るのが気が引けて、陰ながら応援していたのだが、高校サッカーの完璧なヒーローだった先輩の苦悩する姿を見るのが辛くて、そこから連絡を取ろうともせず、逆に先輩の情報をシャットアウトして来て、先輩はきっとまた再起するんだと勝手に信じてきた。 自分勝手に、シュートを決める先輩の姿がもう一度見たい……と夢を見ていた自分が恥ずかしい。 僕なんかには計り知れない努力をしながら挫折を味わい、その上父親の入院に借金。 どうして、この人にこうも辛い事ばかり襲い掛かるんだろうか? 落ちぶれたと人は言うだろうか? それでも前を向いて笑う先輩の姿を、食い入るように見つめた。 自分の運命に打ちひしがれて、悲嘆にくれるところなんか微塵も感じられない。 僕の感傷も同情も跳ね返されそうな強さを感じて、やっぱりテツ先輩はテツ先輩だったと思う。 「お前はラーメン好きだったよな」 「先輩だって。 何かって言うとラーメン食べに行こうぜって……」 ビールを傾けながら、隣の先輩も当時を思い出しているようだった。 最後に先輩と二人で、今みたいに並んでラーメンを食べた時の事が昨日の事のように思い出されて、胸の奥がズキンと痛む。 あの高校の時の憧れの先輩の作ったラーメンを食べてるのが、不思議でちょっと物悲しい。 先輩は、そんな僕の感傷なんかどこ吹く風で、ふっと小さく笑った。 「あれは……ラーメンも好きだったけど、 眼鏡を曇らせながら今みたいにラーメンを啜ってるお前が見たかったんだよ……」 「ぶふっ!……やだな、そんなに面白かったですか? まあ、散々からかわれて、弄られて、ペット扱いでしたから、仕方が無いですけど……」 しらっと、たばこの煙と一緒に吐き出された言葉に、思わず吹き出してしまった。 眼鏡を外して、一度ティッシュで拭いてから掛け直す僕を、呆れたように横目で見る先輩の視線に頬が赤らむ。
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