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無闇に抵抗しても敵いっこない。
一瞬力を抜いて、大人しく従う振りを見せる。
周りでへらへらと嫌らしい笑い声が漏れて
今だ、とそいつの股間にヘディングを食らわせた。
「おい!何してるんだ!」
先輩が部室に入って来たのはその時だった。
どうやら、部室の外に見張りが居たらしいが、その見張りが入口の隙間から中を覗いて怪しい素振りを見せていたらしい。
「ふざけていただけさ。マジに取るなよ。
そうだよな、御子柴」
「そ、そうです。
ちょっと、僕が慌てちゃっただけで」
先輩から目を逸らし、足元まで下がっていたズボンを引き上げながら話を合わせる。
襲われてヤられそうになってたなんて、口が裂けても言いたくなかった。
ほかの先輩たちが逃げるように部室を後にし、テツ先輩と二人だけになった部室で、僕がすっかり制服を着こんで身支度を終えるまで、先輩はドアに寄り掛かったまま睨むような視線を送って来た。
……もしかして
……僕がやつを倒した時の状態が、まるでフェラしてるように見えたんじゃないか?
その可能性を思いついて、さーっと血の気が引いた。
先輩に軽蔑されたのかも知れない……
「帰るか…」と部室を出ようとする先輩の背中に追い縋る。
「……今の、先輩たちが悪ふざけしてて、それだけだったんだけど、僕がちょっとマジに反撃してあんな事に……
本当に何も、何もしてなかったんです!」
必死に弁解する僕を振り返ると、先輩は頭にポンと手を載せ、くしゃくしゃと掻き混ぜてから、僕の首に腕を回しグイと引き寄せた。
「分かったから、もういい。またラーメン食べて帰るか……」
そう言ったあの時の先輩の顔は、頭を抱えられていて見る事は出来なかったけど……
信じてもらえたとすっかり安心し、先輩と密着している状態が嬉し過ぎて、頭に血が上っていた。
そして子犬さながらに先輩の後をついて行ったのを覚えている。
それが、やはり3年生だった先輩とラーメンを食べた最後になった。
そして卒業まで、たまに先輩の姿を見かけても、彼女らしき女の子が待っていて、そっと隠れて見送ったのだった。
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