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結局のところ、こうして満たされながらもさびしさを感じてしまうのが恋なんだと思う。
物思いに耽っている間に少しだけぬるくなったココアを口に含み、いっしょに溜め息を飲み込んだ。
マグカップであたたまる指先に季節を感じ、時計を見上げる。
「まだかな……」
おとなしく待っていようと思っているのに、つい口をついて出た。
その瞬間、襟元にぬくもりがまとわりついて、びくりと身体が跳ねる。
一回り大きな手があたしのマグカップをさっと押さえた。
「危ない」
「が、岳さん」
「悪い、待たせたな」
少し鼻にかかったような低い声は、あたしを甘やかしたい気持ちの表れ。
お互い理解していることとはいえ、こうしてあたしにひとりの時間を強いることを悪いと思ってくれているのがわかる。
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