119人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
──岳さんがあたしを甘やかしたいのは、彼自身が甘えたい時だ。
近頃、なんとなくそういうことがわかってきた。
胸の少し上に回された大きな手に自分の手を重ねながら、彼の腕に顔を埋める。
「なあに、華緒梨。猫みたいじゃん」
「……だって、あったかいから」
「可愛いことを言う」
心底嬉しそうにつぶやいて、岳さんはあたしの手からマグカップをするっと抜いてしまう。
ソファーの後ろから回り込んできた彼は、あたしの隣にすとんと腰を下ろした。
自分はそこに戻されるのが当たり前のような感じで。
「うえ、ココア? ……あっまい」
香りでわかったと思うのに、わざわざ一口飲んでから眉根を寄せる岳さんに、くすくすと笑いが漏れた。
「コーヒー淹れてあげる。待ってて」
.
最初のコメントを投稿しよう!