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ひざかけを岳さんに渡しながら立ち上がろうとすると、ふいに手を掴まれて引き戻される。
頼りないあたしの身体はまたぽすんとソファーに戻され、軽くバウンドした。
「岳さん?」
目をしばたたかせて岳さんの顔を見ると、彼はごくごくとココアを飲み干しテーブルにマグカップを置いてしまう。
「え? あの、岳さん」
「コーヒーより、欲しいもんがある」
少し切羽詰まった声で言いながら、岳さんは両手で器用にひざかけを操りながらあたしの腰を引き寄せた。
「が、岳さん」
ひざかけが包んできて、背中も腰もほわっとあたたかい。
ココアの香りのする岳さんの顔が近付いてきて、あ、と思った。
「……ねえ、昨夜から寝てないって言ってなかった?」
「うん」
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