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「あたしが来てからも、もう3時間くらい過ぎてるよ」
「俺、ほんとよく働くよねえ。肩も腰もいてーのなんの」
小説を書くしんどさはあたしにはわからないけれど、ずっと同じ体勢でパソコンに向かうきつさならなんとなく想像できる。
……でも、そんな身体でふらふらされるよりは、ちゃんとベッドで眠って欲しいような。
「ねえ岳さん、寝たほうが」
「せっかく華緒梨、待っててくれたのに。……もったいない」
あ。
やっぱりわかってくれてるんだ。そういうの。
それだけで、この数時間のもどかしさがとろとろと身体の真ん中に落ちて、溶けていく。
「……岳さん、ずるい」
「なにが?」
「だって、あたしの言うこといつも2歩も3歩も先回りして、なんか言ってくる。全然不満にならない」
着地点のないあたしの言葉に、岳さんはクッと低く笑った。
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