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「俺に、不満言いたいの?」
「そういうわけじゃないけど」
「ははあ。華緒梨、俺にわがまま言いたいわけだ。……でも、だめ」
言いながら、岳さんは液晶テレビに目をやる。
同じように視線をやると、観ていた映画が流れっぱなしだ。
「ねえ、華緒梨。テレビ、ちゅーしてるけど」
やけに平坦な声で言いながら、岳さんの視線が戻ってくる。
岳さんの甘えたいスイッチはいつも突然で、あたしはいつまでたってもそれに慣れなくて、胸が苦しくなってしまう。
いつも負けっぱなしなのがくやしくて、こっそりと口の中を噛みしめた。
「……どうしたらいい?」
眼鏡の奥の瞳を覗き込みながら、なんとか彼の意表を突けないかと首を傾げる。
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