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いつもきりっとした岳さんの眉尻が、へにゃんと下がった。
かと思うと、「はー」と深く溜め息をつき、胸元に額をぐいぐい押しつけてくる。
「あのさぁ、華緒梨」
「う、うん」
どうしていいのかわからないので、目の前のふわふわしたくせ毛をそっと撫でた。
「それは、俺のセリフだよ」
「え?」
岳さんはあたしの肩までひざかけを引くと、のろりと顔を上げ瞳を覗き込んでくる。
「華緒梨は、俺をどうしたい?
……どうしたら、いい」
すっぽり抱きすくめられ、目の前にあるのは色素の薄い岳さんの熱っぽい瞳。
あたしのど真ん中をとらえて離さないそれに囚われて、できることなんて──。
……目を閉じて全部預けることしか、ないじゃない?
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