メヌエットの夜

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「――はー……だっる」 「たまにはいいじゃないですか。こういうスリルがないと――ねぇ?」  あたしの隣で舌なめずりするのは鴇(トキ)。 あたしのパートナー――と言っても、別に恋人関係とかそういうのではない。 相棒、という意味。 いつもの敬語口調はそのままだけれど、今の状況にちょっと気分が高揚しているようで。 「……たまにはって、この展開はちょーっと想定外じゃないの? トキちゃん」 「まぁまぁ、鴉(カラス)ちゃん。しょうがないって事で気合い入れましょう」  カラスはあたしの名前。 あたしは握っていた箒の穂を上にして、柄の先端を床に叩きつけた。 「……うっし。んじゃ、お掃除しますか」  あたし達は、掃除係だ。 ――――  ショッキングピンクのお気に入りのスマホに、りろりろりろ、と嫌いな受信音が鳴った。
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