これもひとつの平凡な一日。

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「ーーーにしても倒産はないよなあ」 手近にあったカフェに入り、アイスカフェラテを飲みながら優斗は溜息を付いた。 陸と優斗は高校からずっと一緒で、会社も偶然一緒になった間柄だ。 「そんな負債あったっけかなあ、俺経理だけど全然気づかなかったわ。陸は気がついてた?」 「営業の俺がわかる訳、もっとないだろ」 「それもそうか」 陸はアイスコーヒーの入ったストローを咥えた。 今まで結構頑張ってきたのに、終わるときはこんなにもあっさりなのか。 日常はこんなにもあっさりと崩壊するのか。 久しぶりに怒りにも似た感情が腹の底からわいてくる。 「それにしたってもどうするよ?ハローワークの手続きだって会社から届かなきゃなんもできねえし、バイトでもしなきゃ家賃とかはらえねえし」 「俺に聞くなよ……」 陸は溜息と一緒に呟いた。 「お前、俺を怒らせたいの?」 優斗は語気を強めて陸を睨んだ。 「別に、俺は、何も……」 「お前、気がついてねーかもしれないけど、いっつも人に合わせて、自分持ってねえみてえなことばっか言ってよお!!なんか考えろよ!!」 陸は優斗の目を見ることができなかった。 その通りだったから。 いつも人に合わせて、楽しくーーー寂しくないようにしてきた自分に、自分の矜持なんかない。 俯いている陸に、ふ、と優斗は表情を緩めて陸に言い聞かせるように言った。 「なあ、今、俺達ってすっげえ笑える状況じゃねえ?会社行ったらいきなり倒産とかマジギャグにしかなんねえよ」 「……そうだな」 「そんなギャグみたいな状況、楽しんじまおうぜ。こんなこと滅多にねーもん」 二人は目を合わせると、プッと笑い出し、カフェに響き渡るような大きな声で笑い出した。 確かに違う一日になった。 笑いながら陸はそう思った。 終。
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