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また同じ朝が来た。
陸(りく)は目を覚ました後、いつもそう思う。
代わり映えしない仕事、生活。
訳のわからない苛立ちと、諦めにも似た持て余す感情。
26にもなって青臭いと同僚に飲み会の時言われたことがある。
どの辺りが青臭いのが自分では分からないが、あまり気分は良くなかったことだけ覚えている。
顔を洗い、軽い天然パーマの髪を整え、ワイシャツを着てスーツを選ぶ。
ネクタイはどれにしようか、とぼんやり考えながらテレビを付けて朝食の準備をする。
毎日がハンコを押すように同じようにしか思えない。
トーストを軽く焼き、インスタントコーヒーを飲みながらニュースを見る。
殺人事件があったとか、外国為替がどうとか、地方へ犬を連れて行ってそこの人とふれあうとか、陸にとってはどうでも良かった。
会社で浮かないために入れている情報だからだ。
一人が怖いわけじゃない。
仕事を潤滑に行うにはどうでもいい話も時には必要だ。
食事が終わるとネクタイを締め、テレビを消し、忘れ物のチェックをして出かけるために1Kの部屋のドアを開けようとした。
今日はきっと違う一日になるよ。
陸の後ろから、可愛らしい少女の声がした。
驚いて振り向いても、誰もいない。
気のせいだと言い聞かせ、部屋のドアを開けた。
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