これもひとつの平凡な一日。

2/4
前へ
/4ページ
次へ
また同じ朝が来た。 陸(りく)は目を覚ました後、いつもそう思う。 代わり映えしない仕事、生活。 訳のわからない苛立ちと、諦めにも似た持て余す感情。 26にもなって青臭いと同僚に飲み会の時言われたことがある。 どの辺りが青臭いのが自分では分からないが、あまり気分は良くなかったことだけ覚えている。 顔を洗い、軽い天然パーマの髪を整え、ワイシャツを着てスーツを選ぶ。 ネクタイはどれにしようか、とぼんやり考えながらテレビを付けて朝食の準備をする。 毎日がハンコを押すように同じようにしか思えない。 トーストを軽く焼き、インスタントコーヒーを飲みながらニュースを見る。 殺人事件があったとか、外国為替がどうとか、地方へ犬を連れて行ってそこの人とふれあうとか、陸にとってはどうでも良かった。 会社で浮かないために入れている情報だからだ。 一人が怖いわけじゃない。 仕事を潤滑に行うにはどうでもいい話も時には必要だ。 食事が終わるとネクタイを締め、テレビを消し、忘れ物のチェックをして出かけるために1Kの部屋のドアを開けようとした。 今日はきっと違う一日になるよ。 陸の後ろから、可愛らしい少女の声がした。 驚いて振り向いても、誰もいない。 気のせいだと言い聞かせ、部屋のドアを開けた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加