10人が本棚に入れています
本棚に追加
中央線はいつも激混みで、身動きが取れないくらいもまれて新宿に着く。
どれだけいるんだろうと思うほどの人間が駅から吐き出されていく。
歩いて10分、大学を卒業してからずっと通ったビルに入り、フロアに向かうためにエレベーターに乗った。
自分の会社のフロアの前で、人だかりができていた。
課長以下全員が呆然と立ち尽くしたり、怒鳴ったり、泣き出したり、皆が皆違った反応を示している。
「おい、どうなってんだよ」
近くにいた同僚の優斗(ゆうと)に声をかけた。
「扉の張り紙見てみろよ」
優斗は疲れたような顔で顎で示す。
なんだろう、と人をかき分け扉の貼り紙を見た。
「平成27年9月末日をもって当社一ノ瀬商事株式会社は倒産とす。私物等の引取などの連絡は追って連絡する」
今日はきっと違う一日になるよ。
違うどころかとんでもないことになってんじゃねえか。
呆然と立ち尽くす陸の腕を引っ張り、優斗は「行こうぜ」と呟いてフロアを後にした。
最初のコメントを投稿しよう!