ロマンチック幻想曲

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指輪と鍵を枕元にベッドに入り、恋人の顔を思い浮かべてみる。どきどき素敵な音がして、ますます眠れない。こんなに綺麗な指輪、もったいなくて指に通せない。ベッドサイドのライトに照らされてきらきらしてる。こんなに華奢なものが、あたしの短い指に似合うのかな……? それにどっちにしたらいいんだろう……右? 左? でも左だと、何だかちょっと……うわぁ……! どうしよう、なんかいろいろ想像しちゃう! ハルは指輪を選んでくれていた時、どんなことを考えてたのかな。どんな顔をして買ってくれたのかな。テレビで見たことがあるシーンのように、店員さんに相談したのだろうか。 そういえば……大好きな人から指輪をプレゼントされるって、少女漫画やドラマで何度も見て憧れてた。それとはちょっと渡し方が違ってたけれど、ハルはいつもこうなんだ。そっけない態度で、思いがけない喜びをくれるの。 指輪と鍵は、もちろんとっても嬉しいプレゼントだけど、ハルの気持ちが一番嬉しい。 明日もし、指輪をつけて会ったとしたら、彼は喜んでくれるかな。嬉しすぎて眠れなかったよって言ってみたら、どんな言葉が返ってくるのかな。会社だぞ馬鹿がって、いつものように叱られちゃうかもしれない。でも少しは嬉しいって思ってくれるかも。 俺はお前だからつきあってんだよ。そう言ってくれたハル。 プレゼントしてくれた指輪をつけて、自分の鍵の隣にもう一つの鍵を並べて、そしてハルの顔を見て、おはようって挨拶するの。ありがとうって笑顔で言って、ハルが選んでくれて幸せですってこと。伝えることができたら、きっと喜んでくれる。 ―――誰より優しくて、誰より素敵な現実をくれるハル。 誰かのことを愛してるって思う気持ちは、今のこの想いがきっと、それだと思うの。 昨日より今日、今日より明日。ハルのこと、きっともっと愛してる。 FIN. 後書き*オマケ
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