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「……美味しい?」
「お、美味い。これなら俺でも食える」
「やったーっ!!」
両手を上げて万歳しながら大喜び。喜びすぎだろうと思ったのもつかの間……
ガターン!!! と聞こえた派手な音。
「おい!」
ソファの上で万歳しながら後ろに倒れ、床に後ろ向きで転落した。
うかつに喜ばすこともできねぇな……
慌てて腕を引っ張り上げると案の定、真っ赤にみるみる腫れ上がる肘。
じわりと涙を浮かべながら、痛いと嘆く。
再確認だ。やっぱりこんな手の掛かる女の相手は、俺ぐらいじゃないとつとまらないだろ。馬鹿な子ほど可愛いとはよく言ったもんだ……
腹も立つし面倒くさい女だが、それでも好きなんだからしょうがない。
惚れた弱みか何なのか。他の奴には分かってほしくもねぇ、こいつの魅力のひとつだとは思うのだが。
怪我の手当てをしながら呆れていると、震える声が聞こえた。
「ごめんなさい」
「ごめんじゃねぇだろが。どうしたらそんな転び方ができるんだ……いつか大怪我するぞ」
「ごめんね。ハルに手当てなんてさせて」
そんなこと怒ってるんじゃねぇよ馬鹿。
「女なんだから痕が残ると困るだろ。もっと気をつけろ」
「はい……それにこんなハルの姿、会社の皆さんには見せられないもんね?」
“にやり”と効果音でも聞こえそうなほどに、憎たらしい顔で言った愛姫。
「あ?」
「だって何か変な感じ。あんなに恐がられてるハルが……」
「馬鹿なお前のせいだろが! 何笑ってんだコラ! だったらテメェでやれ!」
いい雰囲気も何もあったもんじゃねぇ。まぁそれでも……
バレンタインという日のおかげで、自分からはなかなか言わない言葉も伝えることができたし。
これからはもっと、カップルらしいことも楽しんでみようか。
その力を借りてでも、気持ちを伝えるという事が大切なんだと分かったから。
アンチ的な考え方に変わりないし、世間のバカップルのように連日はしゃぐのはまっぴらごめんだが……悪くはねぇか。
───それでお前が喜んでくれるのなら───
FIN.
→後書き*オマケ
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