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「カンパーイ」
2つのワイングラスが音をたてる。
紫乃さんの両親は力なく紫乃さんの要求を飲んだ。
ただ、自分達にとっては紫乃さんは大切な宝物だから縁を切るとか忘れると言うことは出来ない。と言った。
父親は私達をに向かって
「すまなかった」と頭を下げた。
母親は私を見ながら
「私とあの人はお見合い結婚だったの。店の為にって思って結婚したわ。
それでも私はあの人を愛しているし、あの人と結婚して良かったと思っている。
あなたの言う通り。結婚とはそうゆうものね。」
教えてくれてありがとう。と微笑んだ。
店長は疲れきった紫乃さんを送って行くと言って2人で店を後にした。
私はと言うとすぐに母親に電話をした。
詳細は言えないけど、母が父を今でも想っていることに対して夢みたいだ!現実離れしている!と言ってしまったことを謝った。
本当に現実離れした話よね。と言って母はフフッと笑った。
『あなたもそんな相手をちゃんと見付けるのよ。急がなくても良いから、大好きで大好きで夜も寝られないような人よ!』
と大きめの声で言った。
「そんなプレッシャーかけないでよぉ」
と甘えて言うと
『そんな事言ってると運命の人に逃げられちゃうわよ!大好きな人が出来たらしっかりと捕まえておきなさい!』
と言ったので私ははいはい。と適当に返事をして電話を切った。
ホールに戻ると楓君がワイングラスを用意していた。
カンパイを済ませてから
「別に依頼が解決したわけじゃないのにね」
と言って笑った。
「良いんだよ。たまに飲みたい時もあるだろ。」
楓君なりに気を使ってくれているんだろう。
「ありがとう」
と小さく言ってワインを飲んだ。
「楓君の両親は健在?」
そう聞くと
「わかんねーな」
と答えた。
え?と声に出すと
「俺は小さい時に捨てられてからずっと施設育ち!
だから親が何をしてるかなんて全然わかんねーんだ。」
そっか…
かける言葉が見つからずそう言った。
「何も言わないのかよ?この話をしたら必ず、かわいそうだね。辛かったね。って言われるんだよ。」
「じゃあ父親を早くに亡くした私にかわいそうだね。って言う?
私はそんな言葉なんていらない。
自分の事をかわいそうだなんて思ったことないもの。」
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