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話をせずに黙々と作業したせいか、いつもよりかなり早い時間に仕込みが終わった。
紫乃さん、楓君、私の3人はいつもと変わらず各々カウンターの近くで好きなことをしていた。
「ただいまー!店長様のお帰りだぞー」
「おかえりなさーい」
もう誰も余計なツッコミはしなくなった。
「いやーナンパ成功しちゃった!紫乃さんお客様にコーヒーをお持ちして。」
はぁ?と言いながらカウンターから顔を出した。
店長の後ろからおずおずと店の中に入ってきた人物に驚きの声を上げた。
「カンナ!」
その声に驚いた人物はこちらを見て最上級の笑顔を見せた。
「悠里!」
「ありがとうございます。」
私の分を合わせて3つコーヒーを持ってきてくれた紫乃さんにお礼を言った。
私の隣に座る店長の真っ正面に座っているカンナを見て
「それにしてもどうしてこんな人に付いて行こうと思ったの?
何かあったらどうするつもりよ!」
と激しい口調で言った。
「おいおい…自分の店の店長に向かってこんな人って…」
「黙ってて下さい!私はカンナと話してるんです!」
店長の言葉を遮った。
私の肩を叩こうとしたのか、出した左手が行き場を無くしている。
「だってその人何か悩みがあるなら僕に話してみて下さい。って…解決のお手伝いをしますよって言うから!」
カンナも負けじと強い口調で言った。
「もぉ。カンナはいつもそうじゃない。
優しく話しかけてくれた人に付いて行って何か良いことあった?
ぜーんぶダメ男で騙されて終わりだったでしょ。」
呆れた口調で言う。
「私は今まで付き合ってきた人全員良い人達だったって思ってるよ!
結果的にダメにはなっちゃったけど付き合った事を後悔した人なんて誰一人いないもん!」
あー…典型的なダメ女。
お金を盗む男、浮気癖のある男、エッチする時だけ呼び出す男…思い出そうとするときりが無い。
そんな人達のどこが良い人なのよ。
「それにダメ男って言うなら川野君だってそうじゃない!」
えっ?
「悠里は気付いて無かったかも知れないけど、川野君色んな女に声掛けてたんだよ!
私だってウチに遊びに来ないかって誘われたんだから。」
えっ?えっ?
「アイツ不感症だからエッチしても楽しくないんだ。とか、顔と体が良いだけで性格は最悪。とか悠里の悪口たくさん言ってたんだから!」
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