恋する5秒前

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頭が完全に真っ白になった。 不感症?性格最悪? 川野君は全てが初めての男性だった。 正しいエッチの仕方なんて知らないし、正しい甘え方も知らなかった。 裏でそんなこと言ってたなんて… 「それに…」 まだ続くのかと思ったところで、カンナの口が止まった。 「ゴメン。こいつが君の事を傷付けたのは謝る。 でもそれ以上は言わないでくれないかな?」 顔を上げるとテーブルに右手を付いた楓君が居た。 「あっ……悠里ゴメン! 絶対に言っちゃいけない事だってわかってたのに。本当にゴメン!」 カンナが頭を下げた。 「ううん。私が先に言ったの。 カンナごめんね。傷付けてゴメン。」 私も頭を下げた。 「まぁまぁ喧嘩両成敗って事で! でもカンナさんごめんね。悠里が失礼な事を言って」 と言って店長は私の頭を撫でた。 優しく撫でる手の平に涙が溢れそうになる。 ダメだ!泣くな! 私だってカンナに同じ事をしたんだから。私だけ泣くのはズルイ。 そう言い聞かせて涙が流れ出るのを防いだ。 「ありがとう。楓君」 と言うと、楓君は下を向きながら苦しそうな顔をした。 「ところで、依頼についてなんですが…」 店長が本題を切り出す。 「あっ…すみません。あの!相談って無料なんですよね? 私あまりお金がなくて。」 最後の方はよく聞き取れなかった。 「大丈夫です!相談だけなら無料ですから。 話をしてみて依頼したいなぁと思っていただけたら、悠里の友達特典でお安くしますよ~」 「本当ですか?」 カンナが顔を上げた。 「はい。友達特典プラス社員割引もつけちゃいます!」 店長はどこかの通販番組のように声を張り上げて言った。 おいおい。社員割引なんてないだろ。 身内の依頼は受けない信念は一体どこに行ったんだ? 呆れながらそう思った。 「実は先日働いているお店の同僚に告白をされたんです。 とても優しくて、笑顔がとても可愛らしくて…」 「でも悠里が言ったように私男運が無いので。 あっ!今まで付き合ってきた男性に対して後悔とかはないんですけど。」 言い訳のようにカンナが言った。 「ただ、世間一般でダメ男と呼ばれる人達ばかりと付き合ってきたのは事実なんです。」 「だから何て言うか。 良い人過ぎて…とゆうかその前に…色々考えてるんですけど、自分がどうしたいのか全くわからないんです。」
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