大好きな君へ

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校庭で、君は空を見上げていた。 秋の夕日が、君と秋桜を橙に染め上げる。 他に人の姿はなかった。 「……綺麗」 呟いた私の声を、秋風が攫う。君には、きっと届いていまい。 「なあ」 不意に、君は呟いた。私は何も言わず、そばに腰かける。 「秋桜、好きだったよな」 「……覚えていてくれてたんだ」 「よく力説してたし、誕生日にねだられたこともあったよな」 私は、嬉しくてはにかんだ。 そう、誕生日にねだったんだ。それで、もっと別の物を買おうとしてた君に、如何に秋桜が強くて綺麗なのかを伝えたっけ。 君は、覚えていてくれたんだ。
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