大好きな君へ

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「俺、卒業したら県外に行くんだ」 彼は、もう半分は沈んだ夕日を眺めていた。 私の言葉が、届いたの? そう問いたくても、思うように声がでない。ただ、私は彼の言葉を静かに待った。 彼の、一歩を。 「だから、来年からはここには来れない。最後に、ここの景色を目に焼き付けたかったんだ」 「……」 「いつまでも、ウジウジしてたらあんたに怒られるからな。だから、思い切って上京することにした」 「……そっか」 私は少ししか来れなかったけど、君はもうじきに卒業する。 羨ましくて、寂しくて、泣き笑いみたいな顔になった。 「……誕生日、いつも一番乗りで祝ってくれて、いつも、隣にあんたがいてくれて、俺はすごく幸せだった」 「うん」 「……あんたのことが、好きだった」 「……ありがとう」 「……でも、俺は……」 君の顔が、よく見えない。でも、きっと、その顔は涙で濡れていて、だけど、しっかりと前を向いているんだろう。 「……ごめん、俺、もういい加減に進むよ。あんたを忘れない。だけど、もうそろそろ進まなきゃ」 君が、涙を拭いて立ち上がった。 そして、なんの偶然か、君は私の方に顔を向けた。その瞳には何も映らない。 だけど、いつ見た時よりも、輝いていた。 私にはそれだけで、十分だった。
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