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午後から奇跡的に合格した会社の入社式がある。
結城慎(ユウキシン)は彼女にもらったネクタイをしめ鏡を見つめた。
背は高く痩せている。イケメンではないが、彼女が言うにはかわいい系らしい。
結城は久しぶりに自分の顔をまじまじと見た。
髭は濃くないか。不潔に見えないか。身支度は完璧なのにパッとしない。
しょせんこのレベル。そんなことはどうでもいい。目の前の現実に立ち向かう。
新入社員それぞれが、自分の名前と、社会人としての目標を役員たちの前で発表する。
スピーチやプレゼン、人前で話すことに不慣れな結城は、何を言うかメモに書いても忘れてしまうことがある。
どうにか克服し、かっこよく発表できたと彼女に伝えることが目標だ。
その思いがかえって緊張を作り出す。
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