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つくづく器が小さい男だ。
彼女を繋ぎ止める言葉が浮かばない。
身近に感じていた彼女。
想像できる生活圏にいた彼女。
属する場所が変わっただけで、離ればなれになってしまったと感じている。
お互い都内に就職した。住んでいる場所は変わっていない。
仕事で差をつけなけば男としてかっこつかない。地位や名誉を備えなければ、彼女の心を満たすことはできない。
無理だ。
彼女の上司や先輩が、仕事のできるいい男なら、彼女は目移りするかもしれない。
結城は不安に襲われた。
経験不足。チャンスがあっても立ち向かう勇気はない。
壇上の諏訪は流暢なスピーチで堂々としていた。
高そうなスーツ。チラッと見える腕時計。高級品だ。給料をたくさんもらっている。女の扱いに慣れている。
こんな人間が同じ会社にいた。現実を見せつけた。
意識しても始まらない。
それなのに、彼女の架空の彼氏を壇上の諏訪に重ねている。
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