俺の彼氏

入社式

　出遅れないように頑張らなくては。
　入社した会社は給料も知名度も悪くない。会社名をためらうことなく口にできる。

｢新入社員起立｣
　恒例の儀式が始まった。新入社員１６名が名前と目標を発表する。
　真ん中の席にいた結城は他の人より少し遅れて起立した。起立直後周囲を気にし、辺りをキョロキョロ見回す姿は背が高いぶん悪目立ちした。
　諏訪は前方の右側で、他の役員にまぎれ見ていた。
　親近感が持てる。最近の品行方正な式に飽き飽きしていた。

あいつ大丈夫か？

　おお化けするタイプに見えない。メンタルの弱さが態度に出ていた。

　昨日眠れず考えたメモはスーツのポケットにあった。
　他の人と違うことを言えば目立つだろうか。そう思っただけで緊張し、手を伸ばすことができなかった。
　メモは無視し前の人と同じことを言おう。気持ちを切り替えようとした。
　それはマズい。個性がなくなる。
　結城は混乱した。今になり何を言えばいいのか焦っている。