誰かの足音

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「どうして俺に聞いたの?」 「時間だ。次の研修、第3会議室に集合だ」 「…富永くん、待って」 「ほら、弁当片付けて」 「どうして俺に聞くの?」 「何?」 「諏訪常務のこと」 「結城がはっきりしないからだ」 「はっきりしてる」 「ん?」 「…苦手だって言ったよね?」 「そうか?」 「最初の印象が悪かったというか」 「そういうのって意外とうまくいくんだぜ」 「そうだよね。興味持ってもらったっていうか」 結城は富永の言葉に刺激され、本当のことが言いたくなった。 「やっぱな。意識してたのか」 「えっ?」 「気にかけてもらってよかったな」 「別に」 「諏訪常務に好印象じゃん。羨ましい」 「違う。そういうんじゃなくて…憧れというか」 「いいんじゃねーの?」 俺は何を言おうとしているのだろう。 富永なら分かってくれる。ダメだ。誰にも公言してはいけない。諏訪との約束だ。 「よくない」 「なに熱くなって。行くぞ」 富永の目は興味なさそうにどこかを見ていた。
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